糖尿病が発症する原因は?糖尿病の種類ごとの対策や治療方法を紹介

糖尿病は主に、発症者が少ない1型糖尿病と、国内の発症者が多い2型糖尿病の2種類に分けられます。

糖尿病の種類によって、発症する原因や対策が異なっており、それぞれ適切な治療を受ける必要があります。

この記事では、糖尿病について、種類ごとの原因や対策などをまとめました。

この記事でわかること
  • 糖尿病の種類ごとの原因
  • 糖尿病を未然に防ぐための対策
  • 糖尿病の治療方法

糖尿病について知っておきたい人は、参考にしてください。

目次

糖尿病の原因である高血糖はインスリンの分泌量低下や作用低下により起こる

糖尿病の原因は高血糖。インスリンの分泌や効果の異常

糖尿病は高い血糖値が恒常化している状態であり、以下の2種類に分けられます。

  • 1型糖尿病:すい臓が異常を起こして、インスリンがほぼ分泌されなくなる
  • 2型糖尿病:生活習慣の乱れや親族から遺伝が原因で、インスリンの分泌量が減る、もしくはインスリンの効果が薄まる

糖分を摂取した場合、通常は血糖値を下げるインスリンがすい臓から分泌されて、正常な数値に戻ります。

しかし、上記のようにインスリンの分泌や効果に異常があると血糖値が下がりません。

異常が続くと、血糖値が常に高い状態となり、糖尿病に発展します。

1型糖尿病の主な原因は免疫反応異常から発生すると考えられている

1型糖尿病の主な原因は免疫反応異常から発生すると考えられている

1型糖尿病はすい臓でインスリンを作るβ細胞が破壊されて、インスリンがほとんど分泌されなくなる病気です。

しかし、細胞が破壊される原因は、現在も正確には明らかになっていません。

2型糖尿病のように遺伝するものではなく、健康的に生活していても発症する可能性があります。

1型糖尿病の主な原因と考えられているのは、免疫反応の異常です。

  1. 何らかの原因で、自己免疫に異常が発生する
  2. 本来は雑菌やウイルスに対処するリンパ球が免疫反応の異常から乱れ、すい臓でインスリンを作っているβ細胞を破壊する
  3. すい臓が正常に稼働しなくなり、インスリンの分泌が止まる、もしくは分泌されるインスリンの効果が薄まる

先天的な自己免疫疾患やウイルス感染から上記のような免疫反応の異常が起こります。

1型糖尿病は年齢に関係なく発症する可能性がありますが、若年層に多い病気です。

2型糖尿病は生活習慣の乱れや糖尿病の親族からの遺伝が原因になる

2型糖尿病は生活習慣の乱れや糖尿病の親族からの遺伝が原因になる

以下のような生活習慣の乱れが、2型糖尿病の原因となります。

  • 肥満:太りすぎはインスリンの働きを弱める
  • 運動不足:運動しない影響で糖分や脂質をエネルギー消費が減り、インスリンの働きも弱める
  • 睡眠不足、過度なストレス:体調不良によりインスリンの分泌量や効果に影響が出る

遺伝的要素も強く、親族に糖尿病の人がいる場合は、生活習慣がそれほど乱れていなくても発症する可能性があります。

2型糖尿病の場合、1型糖尿病のようにインスリンの分泌が完全に絶たれるわけではありません。

しかし、分泌量の低下や効果が薄まるだけでも、さまざまな病気に発展します。

若い人でも発症しますが、肥満や運動不足など生活習慣が乱れがちになる人が多い40歳過ぎの発症が多いとされています。

1型糖尿病を未然に防ぐのは難しいが2型糖尿病は食事や運動で対策できる

2型糖尿病。食事や運動で対策できる

1型糖尿病は正確に原因がわかっていないため、未然に防ぐのは困難です。

自覚症状も急速に出る場合が多く、その時点ですい臓の細胞は破壊されています。

1型糖尿病を未然に防ぐのは難しいが2型糖尿病は食事や運動で対策できる

ただし、発症率については非常に低いため、過剰に警戒する病気ではありません。

一方、2型糖尿病は遺伝以外が原因である場合、生活習慣の改善から未然に防げる可能性があります。

  • 肥満→食材選びや食事内容の改善
  • 運動不足→適度な有酸素運動を継続的に取り入れる
  • 睡眠不足、過度なストレス→毎日の十分な睡眠時間の確保と定期的なストレス解消

2型糖尿病の症状が出始めた後でも、肥満や運動不足の解消で症状の改善が見込めます。

血糖値の上昇につながる糖質と肥満につながる脂質の摂取量を調整する

血糖値の上昇につながる糖質と肥満につながる脂質の摂取量を調整する

2型糖尿病を未然に防ぐための対策や症状の進行を遅らせる食事として、以下の内容が考えられます。

  • 糖分に変わる炭水化物や砂糖の摂取量を調整する
  • 肥満につながる脂質の摂取量を調整する
  • 血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維の摂取量を増やす
  • 食生活の乱れを防ぐために、毎日の食事を1日3回、決まった時間に取る
  • 過剰な糖分摂取や肥満を防ぐために、ゆっくりとよく噛んで食べる
  • 食物繊維の効果が出るまでは時間がかかるため、食物繊維を含む食材から食べ始めて、最後に糖分を食べるようにする

糖分や脂質は2型糖尿病の発症につながる可能性がある一方で、摂取を制限し過ぎると栄養バランスが悪くなります。

摂取量は減らしつつも、必要な量を摂取するような調整が必要です。

摂取量の調整や食材選びが難しい場合は、かかりつけ医や栄養士に相談してみましょう。

インスリンの働きを高めるために有酸素運動を取り入れ運動不足を解消する

インスリンの働きを高めるために有酸素運動を取り入れ運動不足を解消する

2型糖尿病の対策や治療において、運動不足の解消により以下のような効果が見込めます。

  • 有酸素運動はインスリンの働きを高める効果がある
  • 運動で糖分や脂質をエネルギーとして消費できるため、体内の余分な糖質や脂肪分を減らせる
    (血糖値の上昇と肥満を防げる)
  • 運動により筋肉がついて、基礎代謝が高くなり、運動時以外でもエネルギー消費量が増える

有効なのは有酸素運動であり、手軽に始められる運動として以下が挙げられます。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • サイクリング
  • 水泳

ただし、運動不足は1回きりで解消されないため、継続的に運動する必要があります。

糖尿病が進行しているときは頻尿などの自覚症状が発生する可能性がある

糖尿病が進行しているときは頻尿などの自覚症状が発生する可能性がある

糖尿病を既に発症している場合、人によっては以下のような自覚症状が出てきます。

  • 頻繁に喉が渇く、頻尿、脱水症状なる:余分な糖分を体内から排出しようと、尿量が増えており、尿を出すために水分を多く欲するようになる
  • 疲労感、だるさ:インスリンの異常で糖分が正常に消費できず、エネルギー不足に陥っている
  • 急激な体重減少、食べても空腹が続く:糖分が消費できない分、体内の筋肉や脂肪が消費されて体重が減り、エネルギー不足を補おうと身体が食べようとする

上記の症状が頻度多くみられる場合は、一度医師に診断してもらいましょう。

糖尿病の悪影響から発症する三大合併症にも初期段階の自覚症状がある

糖尿病の悪影響から発症する三大合併症にも初期段階の自覚症状がある

糖尿病を発症している場合、体内のさまざまな部分に悪影響を及ぼします。

中でも発展する可能性が高い病気として、以下の3種類を三大合併症と呼びます。

三大合併症主な自覚症状重症化した場合
糖尿病性神経障害手足のしびれ・痛み
異常な感覚・感覚がなくなる
胃腸の異常
立ち眩み
感覚の消失
糖尿病性網膜症視力低下
視野の霞み
失明
糖尿病性腎症血圧の上昇
むくみ
息切れ・胸の苦しさ
食欲不振
満腹感
腎機能の停止

糖尿病と同様に自覚症状がみられる場合が多く、三大合併症も初期段階の場合は診察や治療で改善する見込みがあります。

重症化した場合は取り返しのつかない状態になるため、上記を自覚したときも早めに医師の診察を受けましょう。

食事や運動療法で治療できない場合は飲み薬や注射薬による治療を要する

糖尿病の治療方法

1型糖尿病と2型糖尿病の治療は、それぞれ以下の内容で行われます。

  • 1型糖尿病:自力でインスリンを生成できないため、インスリン注射などで外部からインスリンを補うか、膵臓移植や膵島移植をする
  • 2型糖尿病:初期段階は食事療法と運動療法を組み合わせて改善できる見込みがあるが、症状が進行している場合は飲み薬やインスリン注射による治療が必要
食事や運動療法で治療できない場合は飲み薬や注射薬による治療を要する

1型糖尿病で破壊されたすい臓は、治療薬では修復できません。

すい臓を治すためにはすい臓全体の移植か、β細胞を含む器官である膵島を移植する必要があります。

体質的に手術を受けるのが難しい場合は、注射や最新機器を用いて定期的にインスリンを補います。

一方、2型糖尿病は症状が初期段階の場合、治療薬に頼らなくても改善可能です。

医師の指示の基、食事療法と運動療法で適正に体重をコントロールしてインスリンの効きをよくします。

食事や運動での改善が見込めない場合は、治療薬やインスリン注射を使用して治療をします。

治療薬として処方される可能性があるのは、以下の飲み薬です。

  • インスリンの分泌低下を補う薬
  • インスリンの抵抗性を改善する薬
  • 糖分の吸収や排泄を調節する薬
  • 上記の配合薬

治療薬が処方された後も食事や運動の内容は継続する場合もあり、多角的な治療から改善を目指します。

2型糖尿病の原因になる生活習慣の乱れを改善して発症を未然に防ごう

糖尿病のうち、1型糖尿病は発症する原因が正確に判明しておらず、未然に防げません。

一方、2型糖尿病は、遺伝的要素に加え、生活習慣の乱れにより発症します。

肥満や運動不足などによる生活習慣の乱れが、インスリンの働きを弱めます。

糖尿病を未然に防げる可能性があるため、食事の内容改善や有酸素運動を意識して行うと良いでしょう。

1型糖尿病と2型糖尿病のどちらに該当していたとしても、早期発見により症状の悪化を防げます。

のどの渇きや疲労感などの自覚症状が出ている場合には、糖尿病を既に発症している可能性があります。

頻繁に症状がみられる場合には、糖尿病の疑いがあるため病院で診察を受けてみてください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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