ヘモグロビンa1cの正常値に年齢別の基準はなく血液検査から判定される

ヘモグロビンa1cの正常値。年齢別の基準はなく血液検査から判定

ヘモグロビンa1cは糖尿病の判定に用いられており、血液検査によって検出されます。

検査結果の数値によって、正常な範囲と判定したり、糖尿病やその疑いがあると診断されたりします。

この記事ではヘモグロビンa1cについて、正常値や血液検査の判定などをまとめました。

この記事でわかること
  • ヘモグロビンa1cの性質
  • 血液検査におけるヘモグロビンa1cの正常値
  • 糖尿病治療時のヘモグロビンa1cの目標値

健康診断で血液検査の数値が気になった人は、自分にどの範囲に当てはまるか参考にしてください。

目次

ヘモグロビンa1cはヘモグロビンに含まれるブドウ糖の割合を示す

ヘモグロビンa1cは赤血球内のタンパク質であるヘモグロビンに、ブドウ糖がどれくらい含まれているか示す数値です。

食事で糖分を摂取したとき血糖値は一旦上昇しますが、インスリンの働きから正常な範囲に下げられます。

しかし以下のような状態に当てはまる場合、血液中にブドウ糖が残ってヘモグロビンと結合します。

  1. 糖分からブドウ糖に変換され、血糖値が上がる
  2. 糖分の過剰摂取やインスリン異常が発生すると、インスリンが本来の働きができずに、血糖値が上がったままになる
  3. 消費されなかったブドウ糖が血液中に残り、ヘモグロビンと結合して糖化ヘモグロビンになる

糖化ヘモグロビンには、以下のような性質があります。

  • 血糖値が高いほどブドウ糖の結合量が多くなる
  • ヘモグロビンの糖化は赤血球の寿命とされる120日間まで戻らない

ヘモグロビンのブドウ糖量が多いと判明した場合、過去2ヶ月間で血糖値に異常があったと判別できます。

ヘモグロビンa1cの正常値は年齢別ではなく血液検査の数値から判定される

ヘモグロビンa1c。血液検査における判断基準

ヘモグロビンa1cを検出するときは血液検査が用いられており、糖化ヘモグロビンの割合によって4つの判定に分けられます。

血液検査におけるヘモグロビンa1cの判定基準は、以下のとおりです。

判定正常値正常高値境界型
(糖尿病予備群)
糖尿病型
HbA1c〜5.5%5.6~5.9%6.0〜6.4%6.5%~

正常値は5.5%までの範囲であり、正常高値になると糖尿病の一歩手前として、警戒の必要がある数値になります。

正常値や糖尿型の判定は年齢別ではなく、上記の基準値が用いられます。

ただしヘモグロビンa1cの判定のみでは、糖尿病の発症は確定できません。

同じく血液検査で判定できる空腹時血糖値の判定や患者の症状と合わせて、糖尿病か否かが診断されます。

空腹時血糖値の判定結果と合わせて糖尿病の有無や再検査を判定する

血液検査で血糖値を検出する際、食事の影響で血糖値が変動しないように、空腹の状態で検査を行います。

空腹時血糖値は朝まで10時間以上絶食した状態が基準ですが、実際の検査では医師が指示した時間に従います。

血液検査における空腹時血糖値の判定基準は、以下のとおりです。

判定正常値正常高値境界型
(糖尿病予備群)
糖尿病型
空腹時血糖値70~99mg/dL100~109mg/dL110~125mg/dL126mg/dL~

空腹時血糖値とヘモグロビンa1cの両方で、正常値から境界型までの範囲内だったときは、糖尿病には当てはまりません。

ただし正常高値や境界型は警戒が必要ない範囲であり、患者によっては血糖コントロールなどの対策を指導されます。

空腹時血糖値とヘモグロビンa1cの両方が糖尿病型、もしくは片方のみ糖尿病型だったときの検査結果は、以下のとおりです。

空腹時血糖値HbA1c糖尿病の典型的な症状、もしくは糖尿病性網膜症の症状検査結果
糖尿病型糖尿病型糖尿病
糖尿病型あり糖尿病
糖尿病型再検査
糖尿病型再検査

糖尿病や糖尿病性網膜症の症状が見られると、ヘモグロビンa1cに異常がない場合でも糖尿病になります。

どちらか片方が糖尿病型だった時点で再検査が確定して、1ヶ月以内に血液検査や尿検査を行います。

糖尿病の再検査で数値に異常がない場合でも糖尿病の疑いと判定される

再検査では初回検査の空腹時血糖値とヘモグロビンa1cの判定を元にして、血液検査の結果から状態を見ていきます。

再検査における検査結果は、以下のとおりです。

初回検査空腹時血糖値HbA1c再検査結果
空腹時血糖値のみ糖尿病型糖尿病型糖尿病型糖尿病
糖尿病型糖尿病
糖尿病型糖尿病
糖尿病の疑い
HbA1cのみ糖尿病型糖尿病型糖尿病型糖尿病
糖尿病型糖尿病
糖尿病型糖尿病の疑い
糖尿病の疑い

初回検査で空腹時血糖値が糖尿型だった人は、再検査で両方に異常がない限り、糖尿病と判定されます。

一方、初回検査でHbA1cが糖尿型だった人で、再検査でもHbA1cのみ糖尿病型だった場合は、糖尿病の疑いになります。

再検査で数値が正常だった人も、一度数値の異常が発生しているため、糖尿病の疑いは晴れません。

再検査した後も、3~5ヶ月の範囲で定期的に検査を行い、数値の経過を見ていきます。

血糖コントロール目標は患者が達成できる範囲で目標値を設定する

血糖コントロール目標。達成できる範囲で目標値を設定

糖尿病治療の中では、血糖値コントロール目標を個別に設定して、目標値を達成できるように薬の処方や指導が行われます。

血糖コントロール目標における目標設定の基準と目標値は、以下のとおりです。

目標血糖正常化を目指す際の目標合併症予防のための目標治療強化が困難な際の目標
目標が設定される患者食事療法や運動療法で目標を達成できる、または薬物療法中でも低血糖などの副作用がなく達成できる患者目標値に対応する血糖値は、空腹時血糖130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満が目安低血糖などの副作用、その他の理由で治療強化が難しい患者
HbA1cの目標値6.0未満7.0未満8.0未満

いきなり正常値を目指すのは難しいため、患者の健康状態や治療の難易度に合わせて、適切な目標値が設定されます。

高齢者糖尿病患者は健康状態や重症低血糖の薬剤使用の有無で目標値が変わる

糖尿病患者の中でも65歳以上の高齢者に該当して、特定の状態に当てはまる人は、通常とは異なる基準値が設定されます。

高齢者糖尿病の血糖コントロール目標は、以下のとおりです。

カテゴリーⅠカテゴリーⅡカテゴリーⅢ
65歳以上の患者の特徴・健康状態認知機能正常かつADL自立軽度認知障害~軽度認知症、または手段的ADL低下、基本的ADL自立中等度以上の認知症、または基本的ADL低下、または多くの併存疾患や機能障害
重症低血糖が危惧される
薬剤の使用なし
7.0%未満7.0%未満8.0%未満
重症低血糖が危惧される
薬剤の使用あり
・65歳以上75歳未満:7.5%未満(下限6.5%)
・75歳以上:8.0%未満(下限7.0%)
8.0%未満(下限7.0%)8.5%未満(下限7.5%)

健康状態で3つのカテゴリーに分けられており、重症低血糖が危惧される薬剤使用の有無によって、目標値が変わります。

ヘモグロビンa1cは糖尿病判定の基準値や治療の目標値で活用される

ヘモグロビンa1cの正常値は5.5%までの範囲であり、基準値は年齢に関係なく適応されます。

血液検査においては、ヘモグロビンa1cと同時に空腹時血糖値の検出も行われます。

絶食する時間などは医師から指定されるため、検査の前日は指示された内容に従いましょう。

糖尿病や高血糖の治療を受ける場合、患者の健康状態や治療状況を加味した血糖コントロール目標が設定されます。

ヘモグロビンa1cは目標値として使われていますが、最初から正常値にするのではなく、患者に合わせた数値を目指していきます。

検査結果から血糖コントロールを実践する際は、目標値を達成できるように調整してみてください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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