糖尿病を発症すると増える足のトラブルや未然に防ぐためのケア方法を紹介

糖尿病で増える足のトラブル。未然に防ぐ為のケア方法

糖尿病は血液中のブドウ糖濃度が高くなる病気で、さまざまな合併症に発展する可能性があります。

高血糖が続くと血管や神経に障害が起こり、症状が進行すると足を切断せざるを得ない場合もあるため、早期発見が重要です。

この記事では、糖尿病の発症による足のトラブルについて、生じる理由や対策などをまとめました。

この記事でわかること
  • 糖尿病発症後に起こり得る合併症
  • 糖尿病の症状と足のトラブル悪化の関係
  • 糖尿病を発症した際の足のケア方法

糖尿病と診断された人や足の感覚に違和感がある人は、参考にしてください。

目次

糖尿病の三大合併症の1つである糖尿病性神経障害が引き起こす足の異変

糖尿病性神経障害。引き起こす足の異変

糖尿病を発症すると、すい臓からのインスリンの分泌量低下やインスリンの効果の薄まりから、血糖値が高い状態が続き、以下のような症状が現れます。

  • インスリンの働きが低下し、本来エネルギーとして消費できるブドウ糖が体内に残る
  • 体内に残ったブドウ糖を尿で排出するため、尿中に含まれる糖が増える
  • 糖の代わりに体内の筋肉や脂質が消費されて、筋肉量や体重が低下する
  • 高血糖により血管が傷つけられて、動脈硬化のリスクが高まる

上記以外にも高血糖から、糖尿病の三大合併症といわれる以下の病気を発症する場合があります。

  • 糖尿病性神経障害:神経やその周辺の機能が低下して、神経障害が起こる
  • 糖尿病網膜症:網膜の毛細血管に障害が生じて、出血や網膜剝離などが起こる
  • 糖尿病腎症:尿中に含まれる糖の増加などが影響して、腎機能が低下する

糖尿病における足のトラブルは、高血糖による血管の損傷や糖尿病性神経障害が関わっています。

糖尿病の患者は足のトラブルが悪化する可能性が高い

糖尿病足病変は、糖尿病の患者に生じる足のトラブル全般を指す言葉です。

足のトラブルは糖尿病に疾患していなくても起こり得ますが、糖尿病の影響により中々治らなかったり、悪化したりする場合があります。

糖尿病により悪化する可能性がある主な足のトラブルは、以下のとおりです。

  • タコ、ウオノメ:靴擦れや悪い歩き方の癖から角質のようなものが発生するが、神経障害で神経が鈍くなるため、気付かない内に悪化する
  • 水虫:カビの感染によって皮膚や爪が変化するが、神経障害から痛みを感じないため症状が悪化して、足全体に広がる
  • 足の変形:神経障害から足の指先が曲がり、自力では元に戻せない状態になる
  • 腫瘍:タコやウオノメが悪化して破裂した後、足の組織が腐って穴が空いたり、黒ずんだ状態になったりする

神経機能が低下して小さな傷に気付くのが遅れると、怪我の悪化や細菌による感染症の疾患に繋がります。

早期段階で対処が出来なかった場合、足の組織が腐る壊疽が全体に進んで、足を切断しなければならない可能性も生じます。

糖尿病患者は足に関連する自覚症状が表れた時点で早めに診察を受ける

糖尿病に疾患している際の自覚症状の中で足に関連する主な症状は、以下のとおりです。

  • 安静時、睡眠中に足をつる
  • 正座などをしていなくても、頻繁に足がしびれる
  • 足に虫が這うような感覚や足の裏に紙が張り付いたような感覚がある
  • 足や足の指が火照る、もしくは詰めたく感じる

高血糖による血管の損傷や神経障害から、足に負荷がかかっていないときも痛みや痺れなどの違和感が生じます。

糖尿病の発症有無にかかわらず、上記の自覚症状が頻度高く現れる場合は、病院で診察を受けましょう。

足の違和感に慣れた後は、傷口から細菌感染した状態でも、神経の鈍りから症状に気付けなくなります。

足のトラブル以外でも自覚症状が現れた場合は早期に診察を受ける

足に関連する違和感以外で、糖尿病の主な自覚症状は、以下のとおりです。

  • 疲労感
  • のどの渇き
  • 頻尿
  • 体重減少、空腹

糖尿病の症状が進行する前に自覚症状に気付けた場合、症状が進行する前の初期段階で治療を受けられます。

以前より疲れたり、のどが渇いたりする頻度が多くなった場合には、糖尿病を警戒するとよいでしょう。

糖尿病性神経障害においても、足以外にも以下のような自覚症状が現れます。

  • 手や指の異常:しびれや痛み、異様な感覚など足と同様の違和感
  • 立ちくらみ、不整脈
  • 胃腸の異常

全身の神経に異常が起こるため、さまざまな部位で違和感が生じます。

合併症を発症している場合は症状が進行している可能性が高く、悪化を防ぐためにも早めに受診する必要があります。

糖尿病足病変は毎日の足の状態確認や清潔な足の保持が予防になる

糖尿病足病変。足のケアで未然に防げる

糖尿病足病変は糖尿病が原因で悪化する可能性もありますが、足のケアで未然に防げます。

糖尿病患者の足の状態確認とケアで意識したい内容は、以下のとおりです。

  • 毎日、足全体や爪の状態を確認する
  • お風呂で足を洗う際は、足の裏や指の間まで綺麗に洗う
  • 皮膚が乾燥する人は、足にも保湿クリームなどを塗って乾燥を防ぐ
  • 爪の伸ばし過ぎや深爪にならないように、適切な範囲で爪を切る

毎日身体を洗う人でも、足の裏や爪といった細かい部分は、十分な洗浄ができていない場合があります。

足の状態を確認するだけでも、異変に気付ける可能性が高くなるため、お風呂に入った時や寝る前の毎日の習慣に取り入れてみましょう。

足のトラブルを悪化させないために正しい靴の選び方や足のケアを心がける

糖尿病足病変を含めた足のトラブルは、小さな傷や汚れから発展します。

毎日外に出る人は、靴の選び方や履き方について以下のような点を意識する必要があります。

  • 足の痛みや靴擦れが起こらない自分の足のサイズに合った靴を選ぶ
  • 靴の中に石やゴミが入っている場合、足を傷つける元になるため早く取り除く
  • 新しい靴を購入したときは徐々にならしながら履く
  • 靴を履くとき以外も外傷を防ぐために靴下やストッキングを履く

女性はヒールを履く人もいますが、靴の締め付けや無理な足の姿勢は足の血流を悪くします。

仕事上どうしても履かなければならない人以外は、足にとって快適な靴を選びましょう。

靴以外にも以下のような部分で、足のケアや負荷をかけないように工夫できます。

  • 足の小さな傷でも、悪化させないためにすぐに消毒したり薬を塗ったりする
  • 足が冷える人は熱さに対して鈍くなるため、冬場のこたつや湯たんぽによる低温やけどにならないよう温度調整する
  • たばこのニコチンは血管を収縮させて血流を悪くするため、禁煙する
  • 病院で診察を受ける際には、足の状態も確認してもらう

足のトラブルを自身で解決できないときは放置せず、悪化する前に早めに病院で治療しましょう。

糖尿病を発症しないための対策は食事の栄養素と運動量の調節が基本となる

糖尿病や糖尿病性神経障害を発症しないための対策としては、主に以下の内容が当てはまります。

  • 血糖値が高い状態が続かないよう、糖質の摂取量を調整する
  • インスリンの働きを弱める肥満の対策として、脂質の摂取量を調整する
  • インスリンの働きを活発にして、エネルギー消費を促す有酸素運動を毎日行う
  • 糖尿病の発症リスクが高くなる統計が出ている飲酒や喫煙を控える

血糖値は食事や運動の影響が大きいため、毎日有酸素運動しつつ、栄養素の摂取量を調整するのが対策の基本になります。

喫煙については、足の血行や糖尿病以外にも身体への悪影響が多いため、健康を考える場合は禁煙が推奨されます。

一方で、飲酒は適量であれば影響が少ないため、飲み過ぎないように意識しましょう。

糖尿病足病変の治療は足のトラブルごとに適切な処置が行われる

糖尿病足病変の治療。トラブルごとの適切な処置

糖尿病足病変により足のトラブルが悪化した際、病院では以下のような治療が施されます。

  • 水虫などの細菌感染は抗真菌薬や抗生物質で治療を促す
  • 傷や腫瘍はそれ以上外傷が増えないように保護しつつ、患者自身も体重などで負荷をかけないようにする
  • 壊疽した部分は該当部分のみを除去して清浄化するデブリードマンで、他の組織まで影響が出ないようにする
  • 傷の治りを早められるように、食事や運動、治療薬による血糖コントロールを実行して糖尿病の影響を減らす

壊疽が全体的に広がってしまった場合、除去が必要な部分が増えるため、結果的に足の切断をせざるを得ない場合があります。

足のトラブルは初期段階であれば、比較的身体への負荷を抑えて治療ができます。

糖尿病から悪化する足のトラブルは日頃のケアと早期発見が重要である

糖尿病足病変はウオノメや水虫などが、糖尿病や糖尿病性神経障害の影響で悪化した状態です。

小さな傷でも放置すれば壊疽まで発展する可能性があるため、早期に発見して対処したり、治療を受けたりする必要があります。

頻繁な足の痺れや足に異常な感覚を覚える場合は、糖尿病の自覚症状の可能性があるため、病院で診察を受けましょう。

糖尿病足病変を未然に防ぐためには、毎日足の状態に異常がないかの確認と足のケアが重要です。

靴選びや足の細かい部分の洗浄、足が傷付かないための工夫は、比較的簡単に実践できます。

糖尿病の発症対策と合わせて、足のケアを意識して普段の生活を過ごしてみてください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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