
記事監修
薬剤師 YS
薬剤師歴15年以上の経験を持つ現役薬剤師です。ドラッグストア、調剤薬局、管理薬剤師として幅広い薬の知識と実務経験を持っています。生活に役立つ医療情報を専門家の視点から分かりやすく解説します。
「胃がもたれる…」「胸焼けがひどい…」そんなとき、皆さんはどうしていますか?
すぐに胃薬を手に取る方も多いでしょう。
でも、その胃薬、どれくらいで効くかご存知ですか? また、正しい飲み方をしていますか?
実は、胃薬の種類によって効果が出るまでの時間は大きく異なり、飲み方を間違えると効果が半減してしまうこともあります。
この記事では、ベテラン薬剤師の視点から、胃薬の効果発現時間や種類、そして効果を最大限に引き出すための正しい服用タイミングを分かりやすく解説します。


胃薬はどれくらいで効く?【効果が出るまでの目安時間】
胃薬の効果は、配合されている成分や作用機序によって異なります。
ここでは、市販薬と処方薬に分けて、効果が出るまでの目安時間を見ていきましょう。
市販の胃薬(制酸薬・H2ブロッカーなど)の効果発現時間
市販の胃薬は、大きく分けて以下の3つのタイプがあります。
- 制酸薬(炭酸水素ナトリウム、水酸化マグネシウムなど):胃酸を直接中和するため、服用後数分〜15分程度で効果を実感しやすいのが特徴です。
- H2ブロッカー(ファモチジンなど):胃酸の分泌そのものを抑えるため、服用後30分〜1時間程度で効果が出始め、長時間持続します。
- 消化酵素剤(ビオヂアスターゼ、リパーゼなど):消化を助けるため、服用後30分〜1時間程度で効果が現れます。
これらの成分は、多くの市販薬に組み合わせて配合されています。
ご自身の症状に合った成分が含まれているか、パッケージや添付文書で確認してみましょう。
処方薬の胃薬(PPI・漢方など)はいつから効く?
医療機関で処方される胃薬は、より強力な作用を持つものが多いです。
- PPI(プロトンポンプ阻害薬)(オメプラール、タケプロン、パリエット):胃酸の分泌を強力に抑えるため、効果を実感するまでに1日〜数日かかることが多いです。
- 漢方薬(安中散、六君子湯など):根本的な体質改善を目指すため、即効性は期待できません。効果を実感するには、一般的に数週間〜数ヶ月の継続服用が必要です。
処方薬は医師の指示通りに服用することが非常に重要です。
自己判断で服用を中断したり、量を調整したりしないようにしましょう。
即効性のある胃薬の選び方と注意点
使用前に製品情報を読み、症状・体質に合う薬を購入・使用する。
使用しても症状が良くならない場合は、薬の専門家(薬剤師・登録販売者)に相談する。
「今すぐこのつらい胸焼けをなんとかしたい!」というときは、ガスターなどの制酸薬を選ぶと良いでしょう。
液体タイプやチュアブル錠(噛んで飲むタイプ)は、さらに早く効果を感じられることがあります。
しかし、即効性のある胃薬は、あくまで一時的な症状緩和が目的です。
根本的な解決にはならないため、症状が続く場合は医療機関を受診してください。


胃薬の種類と特徴【生産薬やH2ブロッカーが即効性!】
胃薬と一口に言っても、様々な種類があります。
ここでは、作用機序別にその特徴を詳しく見ていきましょう。
胃酸を中和する「制酸薬」の効果と特徴
制酸薬は、すでに分泌された胃酸をアルカリ性の成分で中和し、胃のpHを上げることで胃の粘膜を守ります。
主な成分は、炭酸水素ナトリウム(重曹)、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどです。
効果は一時的ですが、即効性があるため、急な胸焼けや胃もたれに有効です。
胃酸分泌を抑える「H2ブロッカー・PPI」の違い
胃酸分泌を抑える薬には、H2ブロッカーとPPIの2種類があります。
- H2ブロッカー:胃酸分泌を促すヒスタミンの働きをブロックします。市販薬としても販売されており、比較的早く効果が現れます。
- PPI:胃酸を分泌する「プロトンポンプ」という酵素の働きを強力に阻害します。H2ブロッカーよりも胃酸分泌抑制効果が強く、持続時間も長いのが特徴です。
どちらも胃酸過多による症状に有効ですが、PPIはより重度の胃食道逆流症や胃潰瘍の治療に用いられることが多いです。
自然由来の「漢方薬」や「整腸薬」の効き方
- 漢方薬:胃の機能そのものを高め、消化吸収を助けることで、胃の不調を根本から改善します。即効性はありませんが、長期的な服用で体質改善が期待できます。
- 整腸薬:乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を補い、腸内環境を整えます。胃の不調の原因が腸の働きにある場合に有効です。
これらの薬は、胃酸を抑える薬とは異なるアプローチで胃腸の不調に働きかけます。
正しい胃薬の飲み方とタイミング【薬剤師が解説】
胃薬の効果を最大限に引き出すには、服用タイミングが非常に重要です。
間違った飲み方をすると、期待する効果が得られないだけでなく、副作用のリスクも高まります。
食前・食後・食間などタイミング別の注意点
薬の添付文書や薬剤師の指示通りに服用しましょう。
一般的には以下のような目的で服用タイミングが設定されています。
- 食前:食事で胃酸が多く分泌されるのを防ぐ目的で、食前30分~1時間前に服用します。(例:H2ブロッカー、一部の漢方薬)
- 食後:食事によって胃の粘膜が荒れるのを防ぐ目的で、食後30分以内に服用します。(例:胃粘膜保護剤)
- 食間:食事と食事の間(食後約2時間後)で、胃の中が空になっている時に服用します。胃酸の中和や、胃粘膜への付着を目的とします。(例:制酸薬、胃粘膜保護剤)
空腹時に胃薬を飲んでも大丈夫?
胃薬の種類によっては、空腹時の服用が推奨されるものも多いです。
例えば、制酸薬は胃の中に食べ物がない状態のほうが、より効果的に胃酸を中和できます。
ただし、胃粘膜保護剤の一部は、食事と一緒にとることで効果が高まる場合もありますので、必ず添付文書を確認しましょう。
水以外で飲むのはNG?お茶・ジュースとの飲み合わせ
胃薬は、基本的にコップ1杯程度の水またはぬるま湯で服用するのが原則です。
お茶やジュース、牛乳などで服用すると、薬の成分が変化したり、吸収が妨げられたりして、効果が弱まる可能性があります。
特に、グレープフルーツジュースは一部の薬の代謝に影響を与えることが知られています。
安全のためにも、水で服用するようにしましょう。


こんなときは注意!胃薬が効かない・効果が遅いケース
「胃薬を飲んでいるのに、なかなか症状が良くならない…」そんなときは、もしかしたら以下のような原因が考えられます。
食生活・ストレスなど生活習慣が原因の場合
暴飲暴食、脂っこい食事、アルコールの摂りすぎ、喫煙などは、胃に大きな負担をかけます。
また、ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、胃酸の過剰分泌や胃の運動機能低下につながります。
胃薬はあくまで対症療法です。
根本的な原因である生活習慣を見直すことが、症状改善への近道です。
他の薬との飲み合わせによる影響
他の病気で飲んでいる薬と胃薬が相互作用を起こし、効果が弱まったり、副作用が出やすくなったりすることがあります。
特に注意が必要なのは、骨粗鬆症の薬や一部の抗生物質などです。
複数の薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
効果がないときの対処法と受診の目安
正しい飲み方をしていても、症状が改善しない場合は、以下を参考にしてください。
- 症状が長引く(2週間以上)
- 痛みが激しい、またはどんどん悪化する
- 黒い便が出る、吐血する
- 体重が減る、食欲がない
これらの症状がある場合は、胃潰瘍や胃がんなど、重い病気が隠れている可能性もあります。
自己判断で様子を見ずに、速やかに医療機関を受診しましょう。


薬剤師の見解|胃薬の効果を最大限に引き出すために
最後に、薬剤師として皆さんに伝えたい大切なポイントをお話します。
自己判断での長期服用は危険
市販薬は症状の緩和を目的としていますが、長期間の自己使用は、病気の見逃しや副作用のリスクにつながるため、注意が必要です。
市販の胃薬は、一時的な症状緩和のために作られています。
漫然と長期間服用し続けると、副作用が出たり、本来の病気を見過ごしてしまうリスクがあります。
数日服用して改善しなかったり、継続して服用が必要になる場合は、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
効果的な服用のためのアドバイス
胃薬を飲む際は、以下のことを意識してみてください。
- 症状に合わせて薬を選ぶ:胸焼けなら制酸薬、もたれなら消化酵素剤、というように、症状に合った薬を選びましょう。
- 生活習慣を整える:食生活や睡眠、ストレス対策を見直すことで、薬の効果を高められます。
- 服用タイミングを守る:食前・食後など、決められたタイミングで服用することで、薬の力を最大限に引き出せます。
薬局での相談時に伝えるべきこと
薬局で薬剤師に相談する際は、以下の情報を伝えると、より的確なアドバイスを受けられます。
- どんな症状か(いつから、どんなときに、どんな痛みか)
- 他の病気や持病の有無
- 現在服用中の薬やサプリメント
- アレルギー歴
些細なことでも構いませんので、気軽に薬剤師に声をかけてください。
まとめ|胃薬の効果が出るまでの時間と正しい飲み方
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胃薬の効果は種類によって異なり、制酸薬は数分〜15分、H2ブロッカーは30分〜1時間、PPIは1日以上かかることが多い
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正しい服用タイミング(食前・食後・空腹時)を守ることで、薬の効果を最大限に引き出せる
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胃薬を飲んでも改善しない場合は、生活習慣の見直しや医師の受診が必要
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市販薬は一時的な対処法。長期服用や自己判断は避けるべき
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薬剤師に相談する際は、症状・既往歴・服用中の薬を伝えるとより適切なアドバイスが得られる