
記事監修
薬剤師 YS
薬剤師歴10年以上の経験を持つ現役薬剤師です。
ドラッグストア、調剤薬局、管理薬剤師として幅広い薬の知識と実務経験を持っています。
生活に役立つ医療情報を専門家の視点から分かりやすく解説します。
風邪をひいたとき、頭が痛いとき…。
「市販薬で済ませようかな?」「いや、もしかして病院に行くべきかな?」と迷うことはありませんか。
薬には、薬局やドラッグストアで自分の判断で購入できる市販薬(OTC医薬品)と、病院でお医者さんが出してくれる処方薬(医療用医薬品)の2種類があります。
これら2つの薬は、その役割、効果の強さ、安全性、そして購入方法において大きな違いがあります。
症状や状況に応じて、適切な薬を選ぶことは、私たちの健康を守る上で非常に重要です。
今回は、長年の臨床経験を持つ薬剤師の私が、それぞれの薬の特徴を明確にし、あなたの症状に合わせた賢い薬の選び方を専門的な視点からわかりやすく解説します。
ぜひ、いざという時の判断に役立ててください。
1. 市販薬と処方薬、基本の違いを理解しよう
市販薬(OTC医薬品)とは?
市販薬は、「Over The Counter」医薬品とも呼ばれ、風邪薬、頭痛薬、胃腸薬など、薬局やドラッグストアで自分で選んで買える薬のことです。
軽度な体調不良や、一時的な症状に対して、病院を受診せずに手軽に使えるのが大きなメリットです。
ただし、自己判断での使用が前提となるため、添付文書(説明書)を必ず熟読し、不明な点があれば専門家(薬剤師または登録販売者)に相談の上、正しく使用することが強く推奨されます。
医療用医薬品は医師の診断に基づき使用される薬で、効果や使用方法など専門家による管理が必要です。
一方、市販薬(OTC医薬品)は、症状に応じて一般の方が薬局などで選び、自己判断で使用することが想定されています。
PMDA 一般の方のためのくすりのQ&A
処方薬(医療用医薬品)とは?
一方、処方薬は、お医者さんの診察を受けて、症状や病気に合わせて処方される薬です。
効き目が良く、専門的な知識に基づいて使う必要があるため、必ずお医者さんや薬剤師の管理のもとで使用されます。


市販薬は軽い症状向けで、処方薬は医師の診断に基づく専門的な薬なので、使い分けが大切です。
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2. 効き目と安全性、どう違う?成分量と副作用のリスク
「同じような症状に効く薬でも、市販薬と処方薬では何が違うの?」と疑問に思うかもしれませんね。
実は、市販薬と処方薬では、含まれている成分の種類や量が異なる場合があり、効き目や副作用のリスクにも差が出ることがあります。
そのため、効き目の強さや、思わぬ体調の変化(副作用)のリスクに差が出てくるのです。
例えば、同じ「痛み止め」でも、処方薬の方がより強い痛みに対して効果を発揮するように作られていたり、市販薬では対応できないような特定の病気に特化した成分が含まれていたりします。
同じ効果を表示していても、成分の種類や含量が異なるため、効き方や効き目、副作用のリスクに差があります。
PMDA 一般の方のためのくすりのQ&A

副作用のリスクも変わるんですね。

だから自己判断で使い続けるのは危険な場合もあるので、薬剤師に相談するのが安心ですよ。
3. 市販薬の種類:要指導医薬品から第3類医薬品までを解説
市販薬と一口に言っても、実はいくつかの種類に分かれているんです。
これは、薬の効き目の強さや、使うときに注意が必要な度合いによって分類されています。
- 要指導医薬品: 薬剤師から直接説明を受けないと買えない薬です。新しい成分が使われていたり、より注意が必要な薬がこれに当たります。
- 一般用医薬品(第1類、第2類、第3類):
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- 第1類医薬品: 特に注意が必要な薬で、薬剤師がいるお店でしか買えません。購入の際には薬剤師から詳しい説明を受ける必要があります。
- 第2類医薬品: 風邪薬や解熱鎮痛剤など、比較的よく使われる薬が多く含まれます。薬剤師または登録販売者から情報提供を受けることができます。
- 第3類医薬品: 比較的リスクが低いとされている薬で、ビタミン剤や消化薬などがこれにあたります。
このように、市販薬も種類によって購入時のルールが違うので、お店で薬を選ぶ際はぜひパッケージの表示を確認してみてください。
要指導医薬品と一般用医薬品には第1類~第3類があります。
要指導医薬品は薬剤師の対面指導が必須で、第2・第3類は登録販売者でも販売可能です。
道北勤医協:市販薬と医師の処方薬の違い


特に第1類医薬品は薬剤師の説明が必要なので、購入時にはしっかり確認しましょう。
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4. 処方薬のメリット・デメリット:信頼性と費用のバランス
処方薬のメリット
- 病状に合った最適な薬: お医者さんがあなたの症状や体の状態をしっかり診て、一番合った薬を選んでくれます。
- 専門家による管理: 薬剤師が薬の正しい使い方や注意点を詳しく説明してくれるので安心です。
- 保険が使える: 医療費の一部負担で済むため、費用を抑えられる場合があります。
処方薬のデメリット
- 診察の手間と時間: 病院に行く手間や、待ち時間が発生します。
- すぐに手に入らないことも: 夜間や休日に急に必要になった場合、すぐには手に入らないことがあります。
医療用医薬品は診察時の病状に合わせて医師が種類や量を決定します。
一方、市販薬は自己判断で使用しますが、必ずしも根本治療には向きません。
住友ファーマ:市販薬と処方薬の違い


急ぎの場合は市販薬で応急処置し、後日必ず医師に診てもらうのが良いでしょう。
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5. 自分で治す「セルフメディケーション」と税金の話
最近よく耳にする「セルフメディケーション」という言葉。
これは、「軽い体の不調は自分で手当てすること」を指します。
上手に市販薬を活用することで、健康管理に役立てようという考え方です。
そして、このセルフメディケーションを応援する制度として「セルフメディケーション税制」があります。
これは、対象となる市販薬を年間12,000円を超えて購入した場合に、確定申告で税金の一部が控除される(差し引かれる)というものです。
健康への意識を高め、医療費を抑えることにもつながりますね。
セルフメディケーションに用いられる医薬品は、医師の処方箋なしで購入でき、消費者が自己責任で使用するものとされています。
厚生労働省:セルフメディケーション税制リーフレット


市販薬を上手に使って健康管理を続けることが、医療費削減にも繋がりますよ。
6. 迷ったときの選び方:症状・時期・費用から判断
では、具体的にどんな時に市販薬を選び、どんな時に病院に行くべきなのでしょうか。
- 軽い風邪・頭痛・胃痛など: 症状が軽度かつ一時的であれば、市販薬でのセルフケアを検討することも可能ですが、症状の継続や重症化の兆候がある場合は医療機関の受診が必要です。
- 高熱・頻繁に症状が続く: 市販薬を飲んでも症状が良くならない、高熱が続く、同じ症状が何度も繰り返されるといった場合は、自己判断せずに病院を受診し、処方薬を検討してもらいましょう。隠れた病気が見つかることもあります。
- 夜間や急な症状: 夜間や休日で病院に行けない、でもつらい…という場合は、ひとまず市販薬で応急処置をして、翌日(開院している時間帯)に必ず病院を受診してください。
※ただし、重い症状や、普段飲んでいる他の薬との飲み合わせが心配な場合は、必ず薬剤師や医師に相談してください。


症状に合った適切な対応が重要です。
7. 医師に相談すべき具体的な症状とは?
特に以下のような症状がある場合は、すぐに医師に相談してください。
市販薬でごまかさず、専門家の診察を受けることが大切です。
- 強い副作用の兆候がある場合: 薬を飲んでから、ひどいめまい、全身の発疹、息苦しさなど、いつもと違う強い体の変化を感じたら、すぐに薬の使用を中止し、医師や薬剤師に連絡してください。
- 持病がある、妊娠中・授乳中の場合: 持病がある方や、妊娠している可能性のある方、授乳中の方は、市販薬を使う前に必ず医師や薬剤師に相談してください。薬の成分が病気に影響したり、お腹の赤ちゃんや母乳に移行する可能性があります。
- 他の薬との併用が心配な場合: すでに別の薬(処方薬や他の市販薬、サプリメントなど)を飲んでいる場合は、飲み合わせによって効果が強くなりすぎたり、副作用が出やすくなったりすることがあります。必ず薬剤師に相談しましょう。


自己判断を避け、専門家の助言を受けることが安全な薬の使い方につながります。
まとめ
- 市販薬は軽い症状向けで自己判断で使いやすいが、用法用量の厳守が大切。
- 処方薬は医師の診断に基づき専門的な管理が必要で、効果が強い反面副作用リスクもある。
- 市販薬には要指導医薬品から第3類医薬品まであり、購入時のルールや注意点が異なる。
- セルフメディケーション税制で市販薬を賢く活用し、医療費の節約も可能。
- 症状が重い・長引く場合や持病・薬の飲み合わせが心配な場合は必ず医師や薬剤師に相談を。