マグネシウムは抜け毛や白髪を改善する?効果や摂取量など薬剤師が解説!

記事監修

薬剤師 YS

薬剤師歴10年以上の経験を持つ現役薬剤師です。ドラッグストア、調剤薬局、管理薬剤師として幅広い薬の知識と実務経験を持っています。生活に役立つ医療情報を専門家の視点から分かりやすく解説します。

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「最近、髪がよく抜けるなぁ。」

「白髪が増えてきた気がする」

そんなお悩み、ありませんか。

髪の変化って、見た目にも気分にも影響するから気になりますよね。

 

そんな中、「マグネシウムが髪に良いらしい」という話を耳にすることも増えました。

でも実際のところ、マグネシウムって本当に抜け毛や白髪に関係あるんでしょうか。

 

この記事では、薬剤師の目線で、マグネシウムの働きや髪との関係、上手な摂り方についてわかりやすくお話しします。

最後までお読みいただければ、あなたの髪の悩みを解消するヒントが見つかるかもしれません。

 

1. マグネシウムって、髪にもいいってホント?薬剤師が解説

「マグネシウムって、白髪や抜け毛にいいって聞いたけど、本当なの。」

最近、患者さんやSNSでもよく聞かれるんですよね。

 

この疑問に対し、薬剤師の立場から、科学的な根拠に基づき、やさしく・正直にお話します。

結論から言うと、マグネシウムは髪の毛の「直接的な治療薬」ではありませんが、その健康を支える「土台作り」には非常に重要な役割を果たします

 

2. マグネシウムの基本的なお話:体と髪の「縁の下の力持ち」

マグネシウムは、体内で300以上の酵素の働きを助けてくれる、まさに「縁の下の力持ち」のようなミネラルです。

骨や筋肉、神経の働きに関わっていて、エネルギーの生産、タンパク質の合成、細胞分裂など、生命活動のほぼ全てのプロセスに関与しています。

 

これらの基本的な働きが円滑に行われることで、実は髪の健康にも間接的に大きな影響があるんです。

例えば、髪の毛はケラチンというタンパク質からできており、その合成にはマグネシウムを含む多くの栄養素が必要です。

また、頭皮の血行促進やストレス軽減といった側面からも、髪の成長環境を整える上で欠かせない存在と言えます。

 

3. マグネシウムと髪との関係:抜け毛・白髪につながるメカニズム

正直に言うと、「マグネシウムだけで白髪や抜け毛が劇的に改善する!」というのは、誤解を生む表現かもしれません。

しかし、マグネシウムが不足していると、髪の健康を損なう間接的な原因となる可能性があります。

具体的には、以下の点が挙げられます。

 

  • 血流の悪化: マグネシウムは血管の収縮・弛緩を調整する役割を担っています。不足すると血管が収縮しやすくなり、頭皮への血流が悪化する可能性があります。髪の毛は毛乳頭にある毛細血管から栄養を受け取って成長するため、血流が悪くなると十分な栄養が届かず、抜け毛や細毛の原因となることがあります。

 

  • 酵素反応の低下と細胞分裂への影響: 髪の毛は毛母細胞の活発な細胞分裂によって成長します。マグネシウムは、この細胞分裂に必要なエネルギー産生やDNA・RNAの合成に関わる酵素の働きをサポートしています。不足すると、毛母細胞の活動が鈍くなり、髪の成長が阻害される可能性があります。

 

  • メラニン色素生成への影響: 白髪は、髪の色を決めるメラニン色素が生成されなくなることで起こります。メラニン色素の生成には、チロシナーゼという酵素が関与しており、この酵素の働きにもミネラルが影響すると考えられています。マグネシウム不足が直接的な白髪の原因と断定はできませんが、体内の酵素システム全体の乱れが白髪を増やす一因となる可能性は否定できません。

 

  • ストレスと頭皮環境の悪化: マグネシウムは神経の興奮を鎮める作用があり、ストレス緩和にも寄与します。ストレスは血行不良や自律神経の乱れを引き起こし、頭皮環境の悪化やホルモンバランスの崩れを通じて、抜け毛を加速させることがあります。マグネシウムが不足すると、ストレスへの耐性が低下し、間接的に髪のトラブルにつながることも考えられます。

 

このように、マグネシウムは“直接の治療”ではないけれど、髪の成長や維持にとって良い「土台づくり」に深く関係している栄養素なのです。

髪の元気が気になる人は、日々のマグネシウム摂取を見直す価値アリですよ。

 

4. マグネシウムはどれくらい摂ればいいの?推奨摂取量と豊富に含む食品

厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、マグネシウムの1日の推奨摂取量は以下の通りです。

  • 成人女性でおよそ270〜290mg
  • 男性で310〜370mg

※数値はあくまで目安であり、個人の活動量や体質、妊娠・授乳などによって前後することがあります。

 

推奨量を聞くと、「結構多いな」と感じる方もいるかもしれませんね。

実際、現代の食生活では意識しないと不足しがちな栄養素です。

 

日々の食事から効率よくマグネシウムを摂るためには、にがりやナッツ類、納豆、海藻類などを上手に取り入れるのがポイントです。

食品中のマグネシウム含有量(100gあたり)(参考:文部科学省「日本食品標準成分表」より)。

食品名 マグネシウム量(mg)
アーモンド(乾燥) 約310mg
ひじき(乾燥) 約620mg
ごま(いり) 約360mg
するめ 約120mg
納豆 約100mg
玄米(炊いた状態) 約44mg
木綿豆腐 約75mg
ほうれん草(茹で) 約40mg
カカオ72%チョコレート 約230mg
バナナ 約32mg
牛乳 約10mg
白米(炊いた状態) 約7mg

※数値は目安であり、調理法や品種によって変動する可能性があります。

 

5. サプリは必要?それとも食事で十分?賢いマグネシウム摂取法

マグネシウムは可能な限り食事から摂取するのが基本です。

食品にはマグネシウム以外の様々な栄養素も含まれており、それらが相乗的に働くことで、より効率的に体内で利用されるからです。

 

しかし、以下のような場合は、サプリメントの利用も選択肢の一つとなります。

  • 忙しくて食事が偏りがちな方。
  • アスリートなど、激しい運動をする方(汗によってミネラルが失われやすいため)。
  • 特定の疾患や薬剤の影響でマグネシウムの吸収が悪い、または排出が促進される方(医師や薬剤師にご相談ください)。
  • 便秘改善を目的として、緩下作用のあるマグネシウム製剤を利用したい方。

 

ただし、マグネシウムのサプリメントを摂取する際には、いくつか注意点があります。

⚠ 注意点:過剰摂取に注意: マグネシウムを過剰に摂取すると、お腹がゆるくなったり、下痢を引き起こしたりすることがあります。

腎臓への負担: 特に腎臓病などの持病がある方は、マグネシウムがうまく排出されずに体内に蓄積し、高マグネシウム血症を引き起こすリスクがあります。必ず医師や薬剤師に相談してから服用してください。

・「多ければ多いほど良い」はNGです。推奨量を参考に、ご自身の体調に合わせて調整しましょう。

・サプリメントはあくまで“補助”であり、疾患の“治療”ではありません。根本的な髪の悩みが改善しない場合は、専門の医療機関を受診しましょう。

 

サプリメントを選ぶ際は、吸収率の高い「クエン酸マグネシウム」や「酸化マグネシウム」などが一般的です。

不明な点があれば、必ず薬剤師に相談し、ご自身の体質や目的に合った製品を選ぶようにしましょう。

 

まとめ:マグネシウムは髪の健康を支える「縁の下の力持ち」

今回の記事で、マグネシウムが髪の健康にどのように関わっているか、ご理解いただけたでしょうか。

  • マグネシウムは直接的に白髪や抜け毛を「治療」するわけではありません。
  • しかし、頭皮の血流改善、毛母細胞の活性化、ストレス軽減など、髪の健康な成長を支える「土台」を整える重要な栄養素です。
  • 成人女性でおよそ270〜290mg、男性で310〜370mgが1日の推奨摂取量です。
  • アーモンド、ひじき、納豆、玄米など、マグネシウムを豊富に含む食品を日々の食事に積極的に取り入れましょう。
  • 食事での摂取が基本ですが、不足が気になる場合はサプリメントも活用できます。ただし、過剰摂取や持病には十分注意し、必ず医師や薬剤師に相談してください。

 

最後にひとこと…薬剤師からのメッセージ

マグネシウムは派手さはないけれど、体にとって、そして髪にとって、とても大事なミネラルです。

髪の悩みがある人は、食事や生活習慣全体を見直す中で、マグネシウムの摂取を少し意識してみると、もしかしたら少しずつ良い変化を感じられるかもしれません。

ただし、大切なのは“バランス”です。特定の栄養素だけを過剰に摂るのではなく、他のビタミンやミネラル、タンパク質などもバランスよく摂取することを心がけましょう。

もし、ご自身の髪の悩みや体調に関して不安なことがあれば、いつでもお近くの医師や薬剤師にご相談ください。

 

※この記事は医療情報をもとに一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の症状や治療に関しては、必ず医師または薬剤師にご相談ください。

 

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