
「あ!薬、飲み忘れた…」
もしかしたら、あなたも一度は経験があるかもしれません。
日々の忙しさの中で、うっかり薬を飲み忘れてしまうこと。
でも、そのままにしておくと、症状が悪化したり、治療効果が十分に得られなかったり、時には体調に異変をきたす可能性もあります。
特に、高血圧や糖尿病、心臓病など、毎日飲むことが大切な薬は、飲み忘れが命に関わることもあります。
この記事では、現役薬剤師である私が、薬を飲み忘れてしまった時の緊急対処法と、二度と飲み忘れないための予防習慣を分かりやすく解説します。
薬の飲み忘れはなぜ危険?その理由とリスク
薬の飲み忘れがなぜ危険なのか、まずはその理由から知っておきましょう。
1. 治療効果の減弱・喪失
薬は、体内で適切な濃度が保たれることで最大の効果を発揮します。
飲み忘れることで、体内の薬の濃度が下がり、本来期待される治療効果が得られなくなります。
2. 症状の悪化
例えば、高血圧の薬を飲み忘れると血圧が再び上昇したり、喘息の薬を飲み忘れると発作が起きやすくなったりと、治療中の症状が悪化する可能性があります。
3. 副作用の発現リスク増加(飲み忘れ後、まとめて飲んだ場合)
飲み忘れた分を取り戻そうと、一度に多量を飲んでしまうと、体内の薬の濃度が急激に上昇し、副作用のリスクが高まります。
これは非常に危険な行為です。
「飲み忘れた!」その時どうする?薬剤師が教える緊急対処法


【原則】気がついた時点で1回分を服用する
飲み忘れに気づいたら、すぐに1回分を服用するのが基本です。
ただし、次の服用時間が近い場合は注意が必要です。
決められた時間からそれほど経たないうちに飲み忘れに気づいた場合は、その時点で飲んでください。
ただし次に飲む時間が近い場合は、1回分を抜いてその次から決められた時間に飲みます。2回分をまとめて一度に飲まないようにしましょう。
ただし、糖尿病薬など食事の直前に飲んだり、食後後すぐ服用するなど、特殊な場合は飲み忘れたらスキップして次のタイミングから服用することが多いです。
ほとんどの薬は飲み忘れに気づいたらすぐに服用して大丈夫ですが、中にはダメな薬もあるので普段から薬局で質問しておいたほうがいいですね。
1. 次の服用時間まで十分な間隔がある場合
例:朝食後の薬を飲み忘れて、お昼前に気づいた場合など
- 気づいた時点で、すぐに1回分を服用してください。
- その後は、通常通り次の服用時間に1回分を服用します。
2. 次の服用時間が迫っている場合(目安:次の服用時間の半分以内)
例:朝食後の薬を飲み忘れて、昼食直前に気づいた場合など
- 飲み忘れた分は服用せず、1回飛ばしてください。
- 次の服用時間に、通常通り1回分を服用します。
- 絶対に2回分をまとめて服用しないでください。
3. 特殊な薬や服用方法の場合
- 週に1回、月に1回などの特殊な薬:自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
- 点眼薬、貼り薬など:内服薬とは異なる対処法が必要な場合があります。必ず薬剤師に確認しましょう。
4. 迷ったら、まずは「かかりつけ薬剤師」に相談!


薬の種類(効能や作用時間など)によって、飲み忘れた際の対応は異なります。
自己判断で対処すると、思わぬ健康被害につながる可能性もゼロではありません。
必ず、かかりつけ薬局の薬剤師や医師に相談するようにしてください。
今日からできる!薬の飲み忘れをゼロにする予防習慣


飲み忘れは、ちょっとした工夫で劇的に減らすことができます。ぜひ、今日から実践できる予防習慣を取り入れてみましょう。
1. 服用タイミングを「習慣」と結びつける
「〇〇をしたら薬を飲む」というルールを決めることで、飲み忘れを防げます。
- 食事の準備ができて、椅子に座ったら飲む
- 歯磨きをしたら飲む
- テレビをつけたら飲む
- 寝る前に必ず水をコップ一杯飲むついでに飲む
2. 薬の置き場所を工夫する
- 目につく場所に置く:食卓の上、洗面所の鏡の前など、普段よく目にする場所に薬を置く。
ただし、お子さんやペットの手の届かない安全な場所に。
- 特定の場所にまとめる:リビングの引き出し、寝室のナイトテーブルなど、薬の定位置を決める。
3. ピルケースや一包化を活用する
- ピルケース(お薬カレンダー):朝・昼・夜など、服用時間ごとに仕切られたケースに入れることで、飲んだかどうかが一目で分かります。
参照:Amazon「お薬カレンダー」
- 一包化(いっぽうか):複数の薬を服用している場合、薬局で1回分ずつ袋にまとめる「一包化」をお願いすることも可能です。
これにより、飲み間違いや飲み忘れのリスクを減らせます。
参照:アイン薬局「薬の一包化とは?メリットと注意するポイント」
4. スマートフォンアプリやアラームを活用する
- リマインダー機能:スマートフォンの標準リマインダーや、服用アプリ(例:お薬手帳アプリなど)を活用して、服用時間になったらアラームが鳴るように設定する。
参照:楽天「薬 飲み忘れ 防止 アラーム」
5. 家族や周囲の協力を得る
一人暮らしでない場合は、家族に「薬を飲む時間だよ」と声をかけてもらうなど、協力を仰ぐのも有効です。
薬の飲み忘れは、誰にでも起こりうること。一人で抱え込まずに相談を!

あの、ちょっと聞いてもいいですか?“かかりつけの薬剤師”って、何なんですか?

かかりつけの薬剤師は、あなた専属の薬剤師で、服用している薬を継続的に管理したり、体調や生活に合わせたアドバイスをする、いわば“薬のパートナー”のような存在なんですよ。
薬の飲み忘れは、決して珍しいことではありません。
大切なのは、「うっかり忘れてしまった」時にどう対処するかを知っておくこと、そして、飲み忘れを予防するための対策を実践することです。
もし飲み忘れてしまったら、まずはかかりつけの薬剤師や医師に相談してください。
あなたの健康を守るために、私たち薬剤師はいつでもサポートさせていただきます。
今日からできる小さな工夫で、あなたの服薬習慣をより安全で確実なものにしていきましょう。
まとめ:薬の飲み忘れ対策と正しい行動
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薬の飲み忘れは治療効果の低下や副作用のリスクを高める可能性がある
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飲み忘れたら、焦らずに「1回分だけ服用」が基本(2回分まとめ飲みはNG)
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次の服用時間が近い場合は、飛ばして次の分から再開する
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自己判断せず、迷ったら必ず薬剤師や医師に相談を
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飲み忘れ防止には、生活習慣と結びつけたり、アプリやピルケースの活用が効果的
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「かかりつけ薬剤師」を持つことで、継続的な服薬サポートが受けられる
※この記事は、薬剤師の知識と経験に基づいて作成していますが、具体的な服薬内容については必ず医師または薬剤師にご相談ください。