

【記事監修】 現役薬剤師(現場経験15年以上)
- ✅ 監修者:当サイト提携薬剤師
- ✅ 専門資格:認定薬剤師、認定実務実習指導薬剤師
- ✔ 15年以上にわたり、累計10万枚以上の処方箋を扱った豊富な臨床経験。
- ✔ 大学病院門前薬局での高度な専門処方(がん治療・難病薬)対応実績あり。
- ✔ 地域薬局・ドラッグストアでの一般の方への服薬指導・健康相談実績多数。
- ✔ 本記事は、公的データ(厚生労働省等)に基づき、監修者が内容の正確性と安全性を確認・保証しています。
「最近、髪がよく抜けるなぁ。」「白髪が増えてきた気がする」
そんな髪のお悩みはありませんか?
髪の変化は見た目だけでなく、気持ちにも影響するため、しっかり向き合いたいものです。
薬局の待合室で「マグネシウムで髪が生えますか?」と聞かれるたび、私たちは、「サプリは魔法の特効薬ではない」という、現場のリアルな知見を伝える必要があります。
では、この「生命のミネラル」は、髪にとって真にどのような役割を果たす「縁の下の力持ち」なのでしょうか?
この記事では、マグネシウムの体内での働きや髪への影響、さらに安全で効果的な摂取方法について、専門的な視点と現場経験を交えてわかりやすく解説します。
最後までお読みいただければ、あなたの髪の悩みを解消するヒントや、健康な体作りのための知識が見つかるはずです。
マグネシウムは抜け毛・白髪の治療薬ではなく髪の土台を整える栄養素

「マグネシウムのサプリを飲めば、抜け毛が減りますか?」
これは、薬局のカウンターで、体調の変化を感じ始めた患者さんから、本当によく聞かれる質問です。この疑問に対し、薬剤師として正直にお伝えします。
結論:髪の「直接的な治療薬」ではありません
マグネシウムは、髪の「直接的な治療薬」ではありませんが、髪が健康に育つための「土台作り」には欠かせない栄養素です。
髪のトラブルは、病気、ホルモンバランス、ストレス、栄養不足など、様々な原因が複雑に絡み合って起こります。
マグネシウムはその中の「栄養素」として、体全体の機能と、間接的に髪の健康をサポートしているのです。
【読者の疑問に答えるQ&A】
患者さんA: 「じゃあ、マグネシウムだけ摂っていれば髪は元気になりますか?」
薬剤師: 「残念ながら、それだけでは不十分です。マグネシウムは重要な『部品』ですが、髪は『ケラチン』というタンパク質から作られます。ですから、タンパク質や亜鉛・鉄分などのミネラルもバランス良く摂ることが不可欠です。全身の栄養バランスを整えることが、髪への一番の近道ですよ。」
マグネシウムが髪に間接的に良い理由|薬剤師の現場知見

マグネシウムが「生命維持の万能鍵」と呼ばれるのは、体内の300以上の酵素反応で「コファクター(共同因子)」として機能するからです。これは、「体内エネルギー工場(ミトコンドリア)」の生産ラインのスイッチを入れ、髪の成長を含む、すべての生命活動の「駆動電力」を生み出す、最も根本的な作用です。
私たちの体の基本的な生命活動、例えば、エネルギー生産、タンパク質合成、細胞分裂などに深く関わっています。この基本的な働きが円滑に行われることが、結果として髪の健康にも良い影響を与えます。
髪の成長・頭皮環境・ストレスケアに役立つマグネシウムの働き

- 髪の材料を作るサポート(タンパク質合成): 髪の毛は「ケラチン」というタンパク質からできています。マグネシウムは、このケラチンをはじめとする体内のタンパク質を作り出す工程(合成)をサポートします。材料作りがスムーズになることで、健康な髪の成長に貢献します。
- 頭皮の血流をスムーズに保つ: マグネシウムは、血管を締め付ける**「カルシウムの過剰な働き」に対して、「ブレーキ役」として作用し、血管を適切に拡張させます。これにより、頭皮の毛細血管という「髪の毛への栄養供給パイプ」の詰まりを防ぎ、毛根まで酸素と栄養を隅々まで届けることを可能にします。
- ストレスケアと頭皮環境の改善: マグネシウムは、神経の興奮を鎮める働き(鎮静作用)があり、ストレスを和らげるミネラルとしても知られています。過度なストレスは、自律神経の乱れや血行不良を引き起こし、髪の成長を妨げます。
【薬剤師の現場経験談】
以前、便秘で酸化マグネシウム(マグネシウム製剤)を服用していた患者さんが、「便秘だけでなく、足のつり(こむら返り)が減ったし、なんとなく寝つきも良くなった」と話してくれました。これは、マグネシウムが筋肉や神経の働きを助けていることの表れです。髪も体の一部ですから、全身の調子が整うことが、髪の元気にもつながると考えるのが自然でしょう。
マグネシウム不足で起こる抜け毛・白髪の原因とメカニズム

マグネシウムが不足すると、体の基本的な機能が低下し、それが髪のトラブルの間接的な原因となる可能性が高まります。
- 白髪との関係(メラニン色素): 白髪は、色を生み出す**「メラノサイト細胞」の機能停止または疲弊が原因です。特に、メラニン合成に必要なチロシナーゼという酵素の活性低下が関与しますが、マグネシウムは多くの酵素の働きを支えるため、不足すると「色素生成の工場運営」**が円滑に進まなくなる可能性があります。これは、**加齢による「工場長の引退」**とは異なる、**栄養不足による「工場の機能不全」**として捉えるべきでしょう。
- 細胞分裂の低下: 髪の成長は、毛根にある毛母細胞が活発に細胞分裂を繰り返すことで成り立っています。マグネシウムは、この細胞分裂に必要なエネルギーを生み出したり、DNAなどの合成に関わったりしています。不足すると、毛母細胞の活動が鈍くなり、髪の成長が阻害されることが考えられます。
このように、マグネシウムは髪の“直接の薬”ではありませんが、髪を育てる「環境整備」に深く関わっている栄養素なのです。
髪に効くマグネシウムの摂り方|推奨量と食事で簡単に補う方法

髪の健康のためには、日々の食事でマグネシウムを十分に摂ることが大切です。では、どのくらい摂るのが理想でしょうか。
情報源の明記:厚生労働省の基準|マグネシウム1日推奨摂取量(成人向け)
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、マグネシウムの1日の推奨摂取量は以下の通りです(※成人を抜粋)。
この推奨量を見ると、「意識しないと足りていないかもしれない」と感じる方も多いでしょう。
現代の食生活では、マグネシウムは不足しやすい栄養素の一つです。
髪に良いマグネシウム食品一覧|海藻・ナッツ・豆類を効率的に摂取
マグネシウムは、海藻類、豆類、ナッツ類、種実類、全粒穀物などに多く含まれています。
| 食品名 | マグネシウム量(100gあたり) | 薬剤師のひとこと |
|---|---|---|
| ひじき(乾燥) | 約620mg | 少量で高効率。煮物やサラダで手軽に。 |
| アーモンド(乾燥) | 約310mg | おやつに最適。ビタミンEも豊富で血行促進に◎。 |
| ごま(いり) | 約360mg | 料理にふりかけるだけで簡単に摂取量アップ。 |
| 納豆 | 約100mg | 日本の優秀な食品。タンパク質も豊富で髪の育成に好影響。 |
※数値は目安であり、文部科学省「日本食品標準成分表」などより引用・作成。
【読者の疑問に答えるQ&A】
患者さんB: 「便秘薬の酸化マグネシウムを毎日飲んでいますが、これは食事のマグネシウムと別で考えていいですか?」
薬剤師: 「便秘薬の酸化マグネシウムは、主に腸内で水分を集めて便を柔らかくするために使われます。吸収される量も一部ありますが、あくまで『薬』です。食事で摂るマグネシウムと合わせて、過剰摂取にならないよう注意が必要です。特に長期服用されている場合は、一度、医師や薬剤師に摂取総量を相談することをおすすめします。」
安全情報・リスクの強調:マグネシウムサプリの注意点|薬剤師が教える安全な摂取方法
マグネシウムは可能な限り食事から摂取するのが基本です。食事に含まれる他の栄養素との相乗効果が期待できるからです。
しかし、不足が気になる場合はサプリメントの利用も選択肢となります。その際には、安全のために以下の点に十分注意してください。
🚨 【最重要】マグネシウムサプリメント利用時のリスクと警告
1. 過剰摂取による副作用: マグネシウムは便を柔らかくする作用があるため、サプリメントを過剰に摂ると、お腹がゆるくなったり、下痢になったりすることがあります。推奨量を参考に、体調を見ながら調整してください。
2. 腎機能低下の方の危険性: 特に腎臓の機能が低下している方(腎臓病、人工透析中など)は、マグネシウムをうまく体外に排出できず、体内に蓄積してしまう「高マグネシウム血症」という重篤な状態を引き起こすリスクがあります。
3. 薬剤との「吸収バトル」による効果減弱(相互作用):特に、骨粗しょう症で使われるビスホスホネート製剤や、一部の抗生物質(ニューキノロン系など)は、マグネシウムが腸内でこれらをガッチリと結合させてしまい、薬が体内に吸収されるのを激しく妨げます。これらの薬を飲んでいる方は、マグネシウムサプリを「服用時間から最低2〜3時間以上ずらす」という、薬剤師からの具体的な指示を守る必要があります。
4. 服用前は必ず相談: 持病がある方、現在他の薬を服用している方は、必ず医師や薬剤師に相談してから服用してください。自己判断は避けましょう。
サプリメントはあくまで「栄養補助」であり、「病気の治療」ではありません。髪の悩みが改善しない場合や、急な抜け毛や白髪の増加が見られる場合は、皮膚科などの医療機関を受診してください。
【読者の疑問に答えるQ&A】
患者さんC: 「サプリを選ぶ時、どんなマグネシウムを選べばいいですか?」
薬剤師: 「マグネシウムには、酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、アミノ酸キレートなど様々な種類があります。吸収率や、便通への影響(お腹がゆるくなりやすいなど)が異なります。一般的にはクエン酸マグネシウムやキレート型のマグネシウムが吸収率の面で推奨されますが、ご自身の体質や目的(便秘改善も兼ねるかなど)に応じて専門家と相談して選ぶのが最も安全で確実です。」
まとめ|マグネシウムで髪を健康に保つためのポイント
- マグネシウムは、髪の成長を阻害する「炎症という火事」を鎮める消防隊**のような役割や、細胞の**「工場長」としてタンパク質の生産ラインを回す**重要なミネラルです。直接的な「発毛剤」ではありませんが、健やかな髪が生まれる「肥沃な土壌」を作るためには不可欠な存在なのです。
- 推奨摂取量を参考に、海藻類、豆類、ナッツ類を積極的に日々の食事に取り入れましょう。
- サプリメントを利用する場合は、過剰摂取や持病、他の薬との相互作用に十分に注意し、必ず専門家である医師・薬剤師に相談することが重要です。
薬剤師からのアドバイス|髪の健康は生活習慣の見直しから
私の薬局には、髪の悩みを抱えつつ、どう対処すべきか迷っている方が多くいらっしゃいます。
髪の健康は特定のサプリメントだけで決まるものではなく、まずはバランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動など生活習慣全体を見直すことが、元気な髪への最短ルートです。
ご自身の髪の状態やサプリメントの選び方、他の薬との兼ね合いなどで不安があれば、いつでもお近くの薬剤師にご相談ください。専門家として、あなたに最適なアドバイスを提供します。
【重要:免責事項とお願い】
この記事は認定薬剤師である監修者の知見に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されています。
特定の症状や疾患の診断・治療を意図したものではありません。
個別の健康状態、薬剤の増量・減量、治療法については、必ず服用されている薬の主治医または薬剤師にご相談ください。
(※特に処方薬に関するアドバイスは、必ずお薬をもらった調剤薬局の薬剤師にご確認ください。)

