
記事監修
薬剤師 YS
薬剤師歴10年以上の経験を持つ現役薬剤師です。ドラッグストア、調剤薬局、管理薬剤師として幅広い薬の知識と実務経験を持っています。生活に役立つ医療情報を専門家の視点から分かりやすく解説します。
毎日コーヒーを飲むのが習慣になっている方も多いのではないでしょうか?私もその一人です。
でも、風邪をひいたり、頭が痛くなったりして薬を飲むとき、「この薬、コーヒーと一緒に飲んでも大丈夫かな?」と心配になったことはありませんか?
実は、薬とカフェインの組み合わせには、ちょっとした注意点があるんです。
今回は、ベテラン薬剤師として、皆さんが安心して薬を飲めるように、薬とカフェインの飲み合わせについて、分かりやすく解説していきますね!
薬とカフェインは一緒に飲んでいいの?【基本の考え方】


まずは、薬とカフェインの基本的な考え方から見ていきましょう。
結論から言うと、薬とカフェインの飲み合わせは、薬の種類や体質によっては注意が必要です。
一概に「大丈夫」とも「ダメ」とも言えませんが、お互いの作用に影響を与え合うことがあるため、正しく理解しておくことが大切です。
カフェインとは?体に与える主な影響
カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれている成分です。
飲むと、気分がシャキッとしたり、眠気が覚めたりする効果がありますよね。
これは、カフェインが脳に作用して、私たちの体を「活動モード」にする働きがあるからです。
具体的には、以下のような影響が知られています。
- 眠気を覚ます:脳の神経を刺激し、覚醒作用をもたらします。
- 集中力を高める:一時的に集中力や作業能力を向上させることがあります。
- 利尿作用:尿の量を増やし、体内の水分を排出する働きがあります。
- 血管を収縮させる:頭痛薬に含まれることもあり、血管を収縮させることで頭痛を和らげる効果も期待されます。
薬とカフェインの相互作用が起きる理由とは?
カフェインを含む薬を他のカフェイン含有飲料と併用すると、過剰摂取や相互作用リスクが高まります。
薬とカフェインが一緒に体に影響を及ぼし合うことを「相互作用」と呼びます。
この相互作用が起きる主な理由は、カフェインも薬も、体の「同じ場所」で処理されたり、影響を及ぼしたりすることがあるからです。
- 分解する場所が同じ:薬もカフェインも、主に肝臓という臓器で分解され、体の外へ出ていきます。同じ場所で処理されると、どちらかの分解が遅れてしまい、体の中に長く残ることで影響が強く出ることがあります。
- 作用する場所が同じ:カフェインも薬も、体の特定の場所(例えば脳など)に作用することがあります。同じ場所に作用することで、効果が強まりすぎたり、逆に弱まったりすることがあります。
どんな薬がカフェインと相性が悪い?【具体例つき】
ここからは、特にカフェインとの飲み合わせに注意が必要な薬について、具体的な例を挙げてご紹介します。
解熱鎮痛薬(例:ロキソニン、イブなど)とカフェイン
頭痛や生理痛でよく使う解熱鎮痛薬には、実はカフェインが含まれているものも少なくありません。
市販薬の「イブA錠」や「バファリンルナi」などがその代表です。
これらの薬にカフェインが配合されているのは、カフェインが薬の鎮痛効果を高めたり、早く効かせたりする働きがあるからです。
しかし、薬に含まれるカフェインに加えて、さらにコーヒーやエナジードリンクなどでカフェインを摂りすぎると、カフェインの過剰摂取になってしまう可能性があります。
その結果、動悸がしたり、胃の不調が起きたり、夜眠れなくなったりすることがあります。


睡眠導入剤・抗不安薬とカフェイン
眠れないときに使う睡眠導入剤や、不安な気持ちを和らげる抗不安薬は、心を落ち着かせたり、眠気を誘ったりする薬です。
これに対し、カフェインは体をシャキッとさせ、眠気を覚ます作用があります。
当然ですが、眠りたいときにカフェインを摂ると、薬の効き目を邪魔してしまい、うまく眠れなくなってしまうことがあります。
また、カフェインによる興奮作用で、不安感が強まってしまう可能性もありますので、これらの薬を飲んでいるときは、カフェイン飲料は控えるのが安心です。
抗生物質(キノロン系)とカフェイン
細菌による感染症の治療に使われる抗生物質の一部、特に「キノロン系」と呼ばれる薬(例:クラビット、シプロキサンなど)は、カフェインの分解を遅らせる作用があることが知られています。
もしこれらの抗生物質を飲んでいるときにカフェインを摂ると、カフェインが体の中に長く留まることになり、動悸、吐き気、不眠などのカフェインによる副作用が強く出やすくなる可能性があります。
このタイプの抗生物質を処方されたら、カフェインの摂取は控えるようにしましょう。
風邪薬や総合感冒薬に含まれるカフェインに注意!
市販の風邪薬や総合感冒薬にも、解熱鎮痛薬と同様に、眠気覚ましや頭痛緩和のためにカフェインが配合されていることがよくあります。
製品の裏面や説明書を見てみてください。
「無水カフェイン」といった表示があることが多いです。
すでにカフェインが含まれている風邪薬を飲んでいるのに、さらにコーヒーやエナジードリンクを飲むと、知らず知らずのうちにカフェインを摂りすぎていることになります。
頭痛や吐き気、眠れないなどの症状が出やすくなるので、注意が必要です。
薬とカフェイン、何分・何時間空ければ安全?
では、薬とカフェインを安全に飲むためには、どのくらいの時間を空ければ良いのでしょうか?
理想的なタイミングは「30分~2時間空ける」
医薬品に含まれるカフェインとカフェイン飲料の併用は、過剰摂取の恐れがあるため避けることが勧められます。
薬とカフェインの相互作用を避けるための理想的な時間は、薬を飲む時間の前後30分〜2時間はカフェイン飲料を避けることです。
特に、薬を飲んですぐは、薬の成分が体に吸収され始める大事な時間なので、この時間帯はカフェインを避けるのがベストです。
ただし、これはあくまで一般的な目安です。
薬の種類や飲む人の体質によって、カフェインの影響の出方は異なります。
心配な場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してみてください。


飲み物別(コーヒー・紅茶・エナジードリンク)のカフェイン量の目安
普段よく口にする飲み物に含まれるカフェインの量は、意外と多いものです。
目安として知っておくと、カフェインの摂りすぎを防ぐのに役立ちます。
- コーヒー(150mlあたり):約60〜100mg
- 紅茶(150mlあたり):約30〜50mg
- 緑茶(150mlあたり):約20〜30mg
- エナジードリンク(1本あたり):種類にもよりますが、50〜200mg以上含まれるものもあります。特に注意が必要です。
※これらの数値はあくまで目安で、製品や淹れ方によって変動します。
薬とカフェインを一緒に摂ったときのリスクとは?
もし薬とカフェインを一緒に摂ってしまった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?
副作用が強く出る可能性
先ほども触れましたが、カフェインが薬の分解を遅らせたり、薬と同じ場所に作用したりすることで、薬の副作用が強く出てしまうことがあります。
例えば、解熱鎮痛薬とカフェインを併用して胃の不調が悪化したり、抗生物質と併用して動悸や吐き気が強く出たりする、といったケースです。
薬の効き目が弱まる・強まりすぎる
カフェインによって、薬の効き目が期待通りに出なかったり、逆に効きすぎたりすることもあります。
例えば、睡眠導入剤の効果がカフェインによって打ち消されてしまい、眠れなくなる、といったことが起こりえます。
また、カフェイン自体が薬のように体に作用するため、薬の作用を強めてしまうこともあります。
不眠・動悸・めまいなどの体調不良
カフェインの摂りすぎは、薬との相互作用がなくても、不眠、動悸、めまい、頭痛、吐き気などの体調不良を引き起こすことがあります。
特に薬を飲んでいるときは、体の状態がいつもと違うため、これらの症状が出やすくなる可能性があるので、注意が必要です。


薬とカフェインの組み合わせ、医師や薬剤師に相談するべき?
「この薬、カフェインと飲んでも大丈夫かな?」と迷ったとき、どうすれば良いのでしょうか?
自己判断せずに専門家のアドバイスを仰ごう
薬とカフェインの飲み合わせは、薬の種類やあなたの体質、普段のカフェイン摂取量など、様々な要因で影響が変わってきます。
インターネットの情報だけを鵜呑みにせず、必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
特に、初めて飲む薬や、複数の薬を飲んでいる場合は、相互作用のリスクが高まる可能性があります。
気軽に質問して、正しい情報を得ることが大切です。
飲み合わせ確認のための市販薬チェック方法
市販薬を購入する際も、カフェインの有無を確認することができます。
- 製品の表示を確認する:パッケージの裏面や添付されている説明書に、「成分」が記載されています。そこに「無水カフェイン」という表示がないか確認しましょう。
- 薬剤師に相談する:ドラッグストアなどには必ず薬剤師がいます。薬を選ぶ際に、「この薬はカフェインが含まれていますか?」「普段コーヒーをよく飲むのですが、大丈夫ですか?」と気軽に尋ねてみましょう。専門家ならではのアドバイスがもらえますよ。


まとめ|薬とカフェインの飲み合わせに注意して、安心・安全な服薬を!
- 薬とカフェインの飲み合わせには注意が必要。薬の種類によって相互作用が起こることがある
- 特に解熱鎮痛薬、抗生物質、睡眠導入剤との併用はリスクが高い
- カフェイン飲料は薬の前後30分〜2時間は避けるのが理想的
- コーヒーやエナジードリンクには意外と多くのカフェインが含まれているため摂取量にも注意
- 自己判断せず、心配な場合は医師や薬剤師に相談するのが安心
- 市販薬のカフェイン成分は「無水カフェイン」などの表記でチェック可能