

【記事監修】 現役薬剤師(現場経験15年以上)
- ✅ 監修者:当サイト提携薬剤師
- ✅ 専門資格:認定薬剤師、認定実務実習指導薬剤師
- ✔ 15年以上にわたり、累計10万枚以上の処方箋を扱った豊富な臨床経験。
- ✔ 大学病院門前薬局での高度な専門処方(がん治療・難病薬)対応実績あり。
- ✔ 地域薬局・ドラッグストアでの一般の方への服薬指導・健康相談実績多数。
- ✔ 本記事は、公的データ(厚生労働省等)に基づき、監修者が内容の正確性と安全性を確認しています。
「抗生物質を飲むとお腹をこわしやすい」「ヨーグルトを一緒に食べると良いと聞いたけれど、薬の効き目には影響しないの?」と悩む方は多くいます。
結論として、抗生物質とヨーグルトは、タイミングを工夫すれば併用が検討できる組み合わせです。
ただし、一部の抗菌薬ではカルシウムなどとの「飲み合わせ」で吸収が落ちる可能性があるため、注意が必要です。
この記事では、公的機関や信頼できる情報源をもとに、抗生物質とヨーグルトの関係を「下痢の理由」「飲み合わせの注意点」「具体的なタイミング」「受診が必要なサイン」まで、現場の薬剤師の視点で分かりやすく解説します。
1.【結論】抗生物質とヨーグルトは一緒でいい?2時間あけるべき理由と基本ルール

はじめに、読者が一番気になる「どれくらい時間をあければいいのか」という点を整理します。
すべての抗生物質に共通する絶対的な時間というわけではありませんが、ヨーグルトなどカルシウムを含む食品と、特定の抗菌薬の服用は前後1〜2時間ほどあけることが一般的な目安として用いられています。
1-1. 抗生物質とヨーグルトの併用は「2時間あける」が無難
ニューキノロン系やテトラサイクリン系の抗菌薬は、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルとくっつきやすい性質があり、この現象を「キレート形成」と呼びます。
このキレートができると薬が腸から吸収されにくくなるため、薬の効果が十分に発揮されない可能性が出てきます。
💡 薬剤師のポイント解説
ヨーグルトはカルシウムを多く含む食品の代表です。
カルシウム製剤と同様、抗菌薬と同時に摂ると、薬とカルシウムが体内で「くっついてしまう」ことで吸収が下がる可能性があります。
そのため、「抗生物質の服用前後2時間はヨーグルト・牛乳・チーズを避ける」というルールを一つの目安にしておくと、安全性を確保しやすくなります。
Q&A形式で疑問を解消!【現場の薬剤師からのアドバイス】
Q. 「2時間あける」と言われても、朝は時間がなくて朝食と薬の時間がかぶってしまいます。
どうしたらいいですか?
A. 毎日の生活リズムの中で、できる範囲で「ずらす工夫」をしていくイメージで大丈夫です。
たとえば朝に抗生物質を飲む必要がある場合は、そのタイミングだけはヨーグルトではなくパンとスープにして、ヨーグルトはおやつの時間や夜にまわすなど、食事の内容を少し調整する方法があります。
仕事や学校で時間が限られている方も多いので、「完璧に2時間きっちり」よりも「薬とヨーグルトを同時にしない」ことを優先して考えていただくとよいと思います。
飲んでいる薬の種類によっても注意点が変わるので、具体的な飲み方は薬局で相談してもらえると安心です。
抗生物質以外にも、牛乳やコーヒーなど「飲み合わせ」に注意が必要な組み合わせは意外と多いものです。
2.なぜ抗生物質で下痢が起こる?腸内細菌バランスと副作用の仕組み

抗生物質を飲むと、「ほとんど毎回お腹がゆるくなる」という方も少なくありません。
この症状の背景には、腸内細菌のバランスの変化が関わっています。
2-1. 抗生物質関連下痢症(AAD)と腸内細菌の乱れ
抗生物質は、病原菌だけでなく、腸内にいる善玉菌・日和見菌など、さまざまな細菌にも影響を与えます。
その結果、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)のバランスが崩れ、水分の吸収や消化の働きが乱れることで下痢が起こることがあります。
抗菌薬の投与後にみられる下痢症の多くは、腸管内常在細菌叢の急激な減少に伴う水分吸収障害などが原因と考えられており、抗菌薬の投与中から投与終了後にかけて発症することがあります。
出典:大阪大学医学部附属病院感染制御部「Clostridium difficileと抗菌薬関連下痢症」
https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/home/hp-infect/file/ictmon/ictmon106.pdf
💡 薬剤師のポイント解説
このような下痢は一般に「抗生物質関連下痢症(AAD)」と呼ばれ、抗生物質を飲んでいる間だけでなく、飲み終わってからしばらくたって起こることもあります。
多くは一過性で軽症ですが、脱水などにつながる場合もあるため、高齢の方や体力が落ちている方では注意が必要です。
Q&A形式で疑問を解消!【現場の薬剤師からのアドバイス】
Q. 抗生物質を飲み始めてから少し軟便になりました。
これは薬のせいでしょうか?続けて飲んで大丈夫ですか?
A. 軽い軟便や回数の少ない下痢は、抗生物質による一時的な腸内環境の乱れで起こることがあります。
水分がとれていて、発熱や強い腹痛、血便などがなければ、多くの場合は処方通り飲み続けることが検討されます。
ただし、症状がつらいときや、回数が増えてつらくなってきたときは、自己判断で中止せず、まずは処方元の医療機関や薬局に連絡して状況を相談してください。
症状や体調に応じて、薬の変更や整腸剤の追加など、より安全な方法を一緒に考えることができます。
3.抗生物質の下痢対策にヨーグルトは有効?乳酸菌・プロバイオティクスの科学的根拠

「抗生物質を飲むときはヨーグルトを食べると良い」という話を耳にしたことがある方も多いと思います。
これは、ヨーグルトに含まれる乳酸菌などのプロバイオティクスが、腸内環境の乱れを補うことが期待されるためです。
3-1. プロバイオティクスと抗生物質関連下痢症
プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌などの生きた有用菌)が、抗生物質関連下痢症を予防できるかどうかについては、複数の研究が行われています。
小児を対象としたコクランレビューでは、プロバイオティクスが抗菌薬による下痢の発症を減らすことが示されています。
解析の結果、プロバイオティクスは抗菌薬関連下痢症の予防に有効であることが示されました。
プロバイオティクス群の下痢発症率は8%、対照群は19%であり、絶対差11%の減少が認められました。
また、一部の研究では下痢の持続期間を短縮する効果も示唆されています。
出典:コクランレビュー「小児の抗菌薬による下痢の予防を目的としたプロバイオティクス」
https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD004827_probiotics-prevention-antibiotic-associated-diarrhea-children
💡 薬剤師のポイント解説
このレビューは小児が対象ですが、「抗菌薬+プロバイオティクス」で下痢の発症が減ったという点は、大人にとっても参考になる知見です。
ただし、プロバイオティクスの種類や量、個人の体質によって効果は異なり、「飲めば必ず防げる」というものではありません。
ヨーグルトはあくまで補助的な位置づけとして考えると良いでしょう。
Q&A形式で疑問を解消!【現場の薬剤師からのアドバイス】
Q. ヨーグルトを食べれば、抗生物質による下痢は防げますか?
A. 「必ず防げる」とまでは言えませんが、下痢の発生を減らせる可能性はあります。
実際の現場でも、抗生物質と一緒に乳酸菌製剤(整腸剤)が処方されることがよくあります。
ヨーグルトは食品として似た役割を期待できるため、タイミングに注意しながら取り入れるのは一つの方法です。
ただし、乳糖不耐症の方や、乳製品でお腹をこわしやすい方では、逆に下痢が悪化する場合もあります。
その場合は、豆乳ヨーグルトや乳糖カット製品、あるいは医療用・市販の整腸剤など、他の選択肢も含めて薬剤師と相談しながら調整してみてください。
4.要注意!抗生物質で受診すべき下痢の症状|偽膜性大腸炎を疑うサイン

抗生物質による下痢の多くは軽症ですが、なかには偽膜性大腸炎など、命に関わる重い病態につながることもあります。
ここでは、「どんな症状が出たらすぐ受診すべきか」を整理し、自己判断の危険性についても触れます。
4-1. 偽膜性大腸炎が疑われる症状
クロストリディオイデス・ディフィシル(旧名Clostridium difficile)と関連する下痢症では、強い腹痛や発熱、粘血便などがみられることがあります。
抗菌薬投与後にこのような症状が続く場合は、早めの評価が重要です。
本記事では、抗生物質に限らず「薬を飲んでいて注意すべき全身症状」として紹介します。
実際に見られる症状:
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水様性下痢(頻回)
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発熱
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強い腹痛
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粘血便
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【薬剤師からのお願い】
「抗生物質を飲んでいるから下痢は仕方ない」と決めつけて、市販の下痢止めだけで様子を見るのは、とても危険な場合があります。
特に、1日に何度も続く水のような下痢、血や粘液が混じる便、強い腹痛や発熱を伴う場合は、自己判断で薬を止めたり、市販薬を追加したりする前に、必ず医療機関に連絡してください。
受診時には、「どの抗生物質をいつから飲んでいるか」「下痢の回数や状態」「ヨーグルトや整腸剤を使っているか」をメモやお薬手帳で伝えていただけると、原因の特定にとても役立ちます。
薬剤師は、飲み合わせの失敗を責めるためではなく、これからどうすれば安全かを一緒に考えるパートナーですので、気になることは遠慮なく相談してくださいね。
5.抗生物質とヨーグルトを安全に併用する5つのポイント【薬剤師が解説】
ここまでの内容を踏まえて、「明日から何を意識すればいいか」を整理します。
目的は、感染症をしっかり治しつつ、お腹の不調をできるだけ減らすことです。
5-1. 今日から実践したいチェックリスト
- 処方された抗生物質が「キノロン系」「テトラサイクリン系」などカルシウムとの飲み合わせに注意が必要なタイプか、薬剤師に確認する。
- ヨーグルト・牛乳・チーズなどカルシウムの多い食品は、抗生物質の服用前後1〜2時間は避けることを目安にする。
- ヨーグルトを取り入れる場合は、薬を飲まない時間帯(おやつ・就寝前など)に回すように工夫する。
- 下痢が長引く、悪化する、血便が出る、強い腹痛があるときは、自己判断で市販の下痢止めを追加せず、医療機関に相談する。
- 乳製品でお腹をこわしやすい方は、ヨーグルト以外の整腸剤や食事内容の調整について、薬剤師と相談する。
5-2. ヨーグルトの選び方と食べ方の工夫
- プロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌など)の量や菌種が明記され、機能性が示された製品を選ぶと、エビデンスに基づいた摂取がしやすくなります。
- 冷たいヨーグルトはお腹を刺激することがあるため、体調によっては少し常温に戻してから食べるなどの工夫も役立つ場合があります。
- 糖分の多いヨーグルトは、血糖値や体重が気になる方にとって負担になることもあるため、無糖タイプやプレーンタイプを選ぶのも一案です。
サプリメントを常用している方は、処方薬との「時間の間隔」についても知っておくと安心です。
まとめ|抗生物質とヨーグルトの正しい飲み合わせと下痢対策
- 抗生物質とヨーグルトの併用自体はNGではないが、キノロン系・テトラサイクリン系ではカルシウムの影響で薬の吸収が低下する可能性がある。
- 安全性を高めるため、抗生物質とヨーグルトは前後1〜2時間あけるのが基本的な目安。
- 抗生物質による下痢は腸内細菌バランスの乱れが主な原因で、ヨーグルトなどのプロバイオティクスが予防に役立つ可能性がある。
- ただし、血便・強い腹痛・発熱を伴う下痢は重い副作用の可能性があり、自己判断せず早めの受診が重要。
- 薬の種類や体質によって注意点は異なるため、不安がある場合は薬剤師に相談しながら調整することが安全な服薬につながる。
【重要:免責事項とお願い】
この記事は認定薬剤師である監修者の知見に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されています。
特定の症状や疾患の診断・治療を意図したものではありません。
個別の健康状態、薬剤の増量・減量、治療法については、必ず服用されている薬の主治医または薬剤師にご相談ください。
(※特に処方薬に関するアドバイスは、必ずお薬をもらった調剤薬局の薬剤師にご確認ください。)








